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2019-03-16
46:18
「佐々木◯似のセフレ」〜忘却〜
映画の説明
深夜の駅前は、そこが駅前であるのを忘れるほど閑散としていた。そもそも、渋谷や新宿と比較すること自体がナンセンスだ、と思った。案件は少なくても、オープンする確率は確実に地方の方が上だ。疑似餌に釣られすぎて擦れてしまった魚のように、渋谷には心を冷たく閉ざした女性が数多く歩いている。
そんなことを考えながら、彼女の待つ駅前にローファーの踵をカツカツと鳴らしながら進んだ。信号を渡ると、すぐに駅前の広場に出る。
彼女らしき人物は、街灯の明かりの下で携帯をぼーっと眺めていた。私が歩いて近づいていくと、彼女はすぐこちらに気付いた様子だった。笑顔で会釈をしながら、右手を軽く上げた。彼女も笑顔で手を振り返した。
「行こうか」
私は穏やかな表情で、彼女に隣を歩くように足取りを促した。福岡から直行していた私は、大量の荷物を抱えていた。ここからの動きは全て事前に頭の中に描かれていた。携帯電話で、ホテルの場所、到着までの時間、空き状況を事前に調べていた。
ホテルが見つからなく、探し回っている状況だけは如何しても避けたかった。入ろうか迷っている瀬戸際の案件を取り逃がしてしまうからだ。
案の定、駅前のホテルは全滅だった。
選択肢としては河川敷のホテル街だ。母数が多ければ、その分だけゴールへリーチできる。河川敷のホテルを選ぶ理由はもう一つあった。私はバッグに線香花火を忍ばせていた。彼女の意識をホテルの外へ向ける。タクシーに乗せるための口実
「疲れたねー。飲みたいけど、調べたらほとんど居酒屋も閉まってるっぽい。」
私は笑いながら、さも残念そうに彼女にそう告げた。彼女にホテルで飲む口実を作ってあげなければいけない。もちろん、まだ開いているバーや居酒屋は無い事も無い。彼女は悪くない。悪いのは全部、私だ。それでいい。
「疲れたしさ、ちょっと酒買ってどっかで飲もうよ。あと、これやろう。」
そう言いながら、私はバッグから線香花火を素早く取り出した。意識を線香花火に誘導した。
「え!やりたーい!(笑)」
彼女の表情は瞬く間にパーっと明るくなった。まるで、佳境に差し掛かった線香花火みたいに。私は駅前に停まっていたタクシーに合図を送った。ドアが開く。彼女を先に乗せる。
「疲れたね。」
ニコっとしながら、彼女の表情を確認する。 彼女の表情は疲れていない。むしろ、一人でこの東北の地に来て、こんな夜まで駅前にいた孤独な精神状態から解放され、とても元気そうだ。
しばらく世間話をしながら、ホテル街へ進む。そのまま、ホテルへ徒歩でインした。私にとって、久々のラブホテルだった。線香花火の話は、この時点では既に完全に消え去っていた。
テーブルの脇に荷物を置き、ボトルを開け乾杯をする。