○○紀香似。六本木・ナース
映画の説明
7月某日、渋谷。
急な土砂降りに見舞われ、横殴りの雨でジーンズの色がさらに濃い青に変わっていた。この日、私は2件のアポがあった。前の女性との予定を早めに済ませ、先日番ゲしたナースとのアポを目前にしての、些細な災難だった。
AM10:00渋谷ドンキ前。
黒いワンピースをビショビショに濡らした彼女は、私をそこで待っていた。
「ゴメン、遅れちゃって…。田舎者だからさ、迷っちゃって…」
彼女は言った。
「大丈夫だよ。だってわざとじゃないでしょ?それに、キミが同じ立場だったら俺を怒る?」
私はそう笑顔で言った。彼女は照れくさそうに首を振った。シャンパンをドンキで買った。フルーツはすでに冷蔵庫で冷やしてあった。会計を済ませ、店を後にした。彼女は、自分の傘に入るように私を促したが、どう考えても彼女の折りたたみ傘は小さい—。
「俺がさすよ。ほら、腕につかまって。」
私はそう言って、大きめの傘を出し右腕に彼女をつかまらせた。現実から乖離させ、情緒的で甘美な時間・空間を演出する。
彼女は必要以上に、私にくっついてきた。しばらく、雨の中を歩きながら会話を深める。
「私、かっこいい人苦手なんだよね(笑)」
彼女は言った。言動と行動が矛盾している。私は緩やかに流すことにした。かっこいい人=私の方程式を作りたくはなかった。質問を掘り下げると、彼女の気持ちをより顕在化させることになってしまう。地雷の匂いがした。なるべくなら、後腐れないような関係を構築したかった。攻め方が決まった。
彼女の好物は肉。そこにフォーカスして、今日のアポを取り付けていた。しかし、雨が激しいことを理由に、一旦ホテルで飲むことを打診した。すぐに了承を得た。シャンパンで乾杯をし、彼女のテンションが徐々に上がっていくのを感じた。
彼女とは、先週六本木V2TOKYOで出会った。石川県出身、ナース。身長は高め。グラマーな体型、巨乳。姉がギャルで、今年の6月にクラブに連れて行かれたのをきっかけに、クラブ遊びを覚えたらしい。恋愛経験は3人。旦那はイケメンらしいが、こうして私の元にきたということは満足していないんだろう。
「元彼に似てるんだよね…」
彼女は言った。強い好感を感じた。と同時に、距離を一気に詰めた。
「申し訳ないけど期待に応えることは出来ない…」
彼女は言った。あるいは形式なのか。私は判断を迷った。ここは長期戦も視野に入れて、じっくりいくべきだ。
「別になんにも期待してない(笑)とりあえず楽しく飲もう。」
私は、そう言いながら、自分と彼女のグラスにシャンパンを注いだ。一口飲んで、彼女の目を見た。頭をぽんぽんしながら、微笑んだ。ゆっくりと、キスをした。一度離れて、またゆっくりとシャンパンを飲む。
「あのとき(クラブの中でも)もしたよね。覚えてる?」
彼女は言った。